クレイジーケンバンド / あぶく

drkcs2005-01-04


新しい文化を創るのは決して若者世代だけの特権ではない。しかし実際そうなりがちであるのは、若さが新しい発想を生むというより、重ねた経験が新しい発想を拘束するんだと思う。自分も年を重ねるごとに身にしみていくのは、何か考えるべき事項が出てきた時に、新しい考えが生まれてこないのではなく、これまでの経験の中から解決策がさっと出てきてしまうようになり、また、例えそれがベストではなくてもなんとなく乗り越えられるんだろうなって妥協する余裕まで出てきてしまう。だから苦労して新しい事にチャレンジする必然性がなくなってきてしまう。これを悲しい事だと捉えなくてはならないのだろうか。否。文化は常に新しいものである必要性はないのだ(と考えるのも妥協のなせる技かもしれないが)。

横山剣は決して新しい事にチャレンジしているわけではない。むろん、本人にとってはいろんなジャンルの音楽へチャレンジしているのかもしれないが、むしろ彼のこれまでの豊富な経験を音にしているだけで、音楽ジャンル的には革新ではない。しかし彼は革新家である。それは、そのスタイルにある。ロックというジャンルにおいて経験を武器に既成音楽を当たり前に作り出し、その上、これまた若者には出せない年齢相当のボーカル味を乗せていくという手法は、洋楽では当たり前のようにあるのだが、日本のロック界には何故か数える程しかいない。しかもそのほとんどが若い頃から名声を得て今日に至るものばかり。中にはアリスみたいに演歌に日和る輩までいる。

年輪を重ねたからこそ、経験を重ねたからこそ、できるロックがそこにはある。この「あぶく」は特にそれを痛感させられる。カッコイイとはなんぞや。俺も10年前ならこの曲を聴いてそんな風には思わなかっただろうな。

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