love your life / 石田ショーキチ

drkcs2007-09-19


もうほんとに気まぐれ更新もいいとこですが、よほどのことがないと書く暇さえ(というかモチベーションが)ないんです。ほぼ毎日のペースで新しい音楽に触れ合う習慣は昔から全く変わりないんですけど、30年近くそういうことをしていると、新しい音も新しく聞こえないし、心を揺さぶるようなインスピレーションも湧かなくなるもんです。それでも1年に数回はそういう感動にいまだに出会えるし、そういう体験が貴重になるほど、感動もまたひとしおなわけで。

そういう意味では、今年もそういう感動は味わっています。車の中では、サクラメリーメンの「ロングロード・オデッセイ」は1ヶ月以上のパワープレイだったし、他にも最近は、くるり・ドーパン・中田ヤスタカ・100s・BaseBallBear秦基博岩瀬敬吾などなど、ここで紹介したアーティストも新しいアーティストもいろいろお気に入りはあります。けど、お気に入りと感動は違うんですよね。単純にその音を気にいるだけでなく、僕の場合、音の先にふと垣間見える音以外の何かに気づいてしまった時、すごく感動するんです。それはたいていの場合、そのアーティストの考え方であったり、生き様であったり、時代との接し方であったり。アーティストの人格というか、人としての個性を、音から直接的あるいは間接的に感じられるとき、っていうのかな。だから日頃から「レコード」という音以外の情報はあんまり自ら詮索しないようにしています。ネットや雑誌でアーティスト情報とか安易に調べるんではなく、あくまで新譜を聴いて、自分なりにそのアーティストが音で何を表現したいのか、どうやってこの時代に自分の音を発表したいのか、ってことを自分勝手に想像するのが好きなのかもしれません。

さて今日の本題ですけど、本日発売の石田ショーキチの初ソロアルバム「love your life」。もうこのブログではさんざん書いてきたとおり、根っからのショーキチおたくなんで、今更何を感動なんだ、ってのもあるんですけど、というか自分自身、そこまでの期待をして買わなかったんで、正直びっくりしつつも、ああやっぱりショーキチが好きなんだなと再認識してしまいました。

Spiral LifeScudelia ElectroMOTORWORKSといろいろなグループで作品を発表してきたショーキチですが、そう、そういえばソロは初めてなんですよね。なのに、完全に僕の予想通りなんですよ。おそらく最もショーキチ個人色が強かったのがScudeliaだからそれ系だろうし、だけどライブで見せるロックンロール系はScudeliaのレコードでは抑え気味だったから、MOTORWORKSっぽいロック色は出してくるだろうな、なんて勝手に想像してたら、、その通りだし。なんか長年信じてきたことが証明された安堵感。

ショーキチの何が好きって、彼と僕の音楽的バックグラウンドの共通性。「第二次ブリティッシュインベージョン」って聞いたことありますか?アメリカが生んだロック音楽を60年代に独自に発展させたビートルズらイギリス人アーティストたちがUSチャートを賑わせたのがブリティッシュインベージョン(イギリス人の侵略)。そして70年代後半から80年代前半にかけて再度起こったのが第二次。デュランデュラン、カルチャークラブを始めとし、おそらく数十から100近い数のブリティッシュアーティストがアメリカをはじめ、全世界で売れた時代でした。

ショーキチは僕の2つ上だけど、僕もまさにその頃に洋楽にどっぷりと浸かってました。そして、たぶんショーキチもそうだけど、バカ売れしたアーティストよりも、少しマイナーだったり、一発屋で終わったアーティストの名曲の方が好きだったんですよね。最近流行の(というか商業的戦略で氾濫している)R35系の懐かしCDに惜しくも落選するくらいのアーティストや曲。

スクーデリアではアルバムごとに、そういう曲のカバーが、隠しトラックとかでさりげに入っていたりして、すごく共感してました。Human League 「Don't you want me」、Strawberry Switchblade「Since Yesterday」、Lipps「Funky Town」、F. A. David 「Words」などなど。どれも一発屋なんだけど、むしろそのころの大ヒット曲より僕は好きだった曲ばかり。

そしてショーキチのもう一つのルーツは言わずと知れたオフコース。「秋の気配」「時に愛は」の2曲をカバーしてますが、それだけでなく彼の生み出す美メロの基本形はやっぱりオフコースだと思うんです。僕も中学生以前、洋楽を聞き出す前は、ニューミュージックずっぽりでした。世間はアイドル歌謡曲全盛でしたけど、オフコース山下達郎なんかを聞く生意気な小学生でした。

もう僕の勝手な妄想なんですが、ほんと、ショーキチとは育ってきた音楽環境に共感できるんです。だから安堵感。

それを決定的にしてくれたのが、今作。「love your life」自分の人生を愛せよ。音楽は時代とともに移り変わるし、邦楽聞いたり洋楽聞いたり、好みも変わっていきます。逆に、音楽を接し始めてから三十余年、音楽を聴くと自分の人生を振り返れたりもします。大好きだった音楽をまた愛することが自分の人生を愛することになる。音楽を大好きだったあの頃を思い出してほしい、、今作のアルバムタイトルにはそんなメッセージが込められている気がします。

そしてまずはやっぱりカバー曲。トッドラングレン! I saw the light!! 選曲だけでもう涙ちょちょギレですわ。あぁ、やっぱりショーキチはトッドが好きだったんだ。一緒だぁ。安堵感通り越して絶大なる信頼感。あぁ、ブラックマリアなんかも演ってくれないかな。

そんでもって他の曲も。ソロだけあって、彼個人の色がこれまでのどの作品よりも濃くなってて、より僕好み。ベースは第二次ブリティッシュインベージョン系80年代ニューウェーブなんだけど、彼のこれまで積み上げてきたアレンジ技量がふんだんに盛り込まれていて、妙なレトロ感とかは全く皆無。ニューオーダーとかYMOとか連想しちゃう曲もあるけど、でも2000年代の今の曲調になってる。なんて言うんだろ、R35世代が安心して聞ける新しい音楽。そう僕ら世代はスターウォーズ世代でもあります。もちろんアナキンじゃなくてルーク「スカイウォーカーチルドレン」。歌詞の世界でもこうした30代に直接ビビッとくるキーワードで溢れてるあたりもニクい演出です。

最近GoingUnderGroundとか音速ラインとか個性的な美メロを量産できるアーティストもいっぱいいて、そういうの聞いてすごく満足してたけど、ショーキチは音楽的背景も含めてあまりに自分にシンクロしすぎるんで、やっぱり個人的には別格なんです。わかっちゃいたけど改めて再々認識。

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