音速ライン / 100景

drkcs2006-08-10


ずっとさぼってたのは、忙しいから、だけではありません。というよりも書きたかった事を書き尽くしてしまったからなんだと思います。単にボキャブラリーの乏しさ故とも言えますが、これだけの期間とアーティスト達について書いたものを客観的に振り返ってみると、潜在的な自分の音楽観が整理され終わっていることに気づきます。始めたきっかけは、自分が出会った音楽に対する感動を他人にも紹介したいということだった気がするのですが、それは錯覚だったのかもしれません。

でもまぁたまにはまた書いてみてもいいかな、てな気分になった時だけ。

最近もいろいろな新しい音楽に出会い、いろいろ感じてはいるのですが、久々に書きたいモチベーションのとても高いレコードに出会えました。去年の一押しアーティストとして紹介したことのある音速ラインです。メジャー1stアルバムは、期待を充分に満足させてくれるクオリティでしたが、残念ながらほとんどが既出曲でした(レミオロメンほどではありませんが)。ただ、ちょっと気になっていたのは、「逢いたい」という新曲でした。この曲はかなりキャッチーで、一般的に言えば、シングルにもっとも打ってつけの曲だと思います。しかし、あくまでアルバムの中の一曲としてリリースされました。その後シングル「ナツメ」がリリースされ、そのカップリングとして再登場します。しかしやはりあくまで「カップリング」扱い。もちろんナツメがだめってわけじゃないんです。ただ、一般的、あるいはセールス狙い的に言えば、曲順を逆にした方がクレバーな気がするんです。

なんて書いてると、なんだか否定的に聞こえてしまうと思いますが、言いたいことは全く逆なんです。そのクレバーさがないところをますます気に入ってしまったんです。それがミスディレクティングではなくポリシーなんだと確信できたのが、この2ndアルバム「100景」でした。

先行シングルはさきほどのナツメと、「みずいろの街」です。セールス的にどうなのかとかはよく知りませんが、まだまだ世間一般の音速ライン知名度がさほど高くないところをみると、レミオロメンクラスなブレークアーティストとは言えないでしょう。そしてこの100景。今度は既出4曲、新曲6+1曲、という堂々とした内容なんですが、この新曲群の内の何曲もが「逢いたい」と同じようにとてもキャッチーなんですよ。

ここでいう「キャッチー」という言葉の意味するところなんですが、世間一般的には肯定的な意味で、個人的には否定的な意味なんです。言い換えれば、「とても覚えやすいメロディ」=「よくあるメロディ」=「あまり個性的ではないメロディ」って感じです。

で、僕個人は、これまでずっと書いてきたのを振り返るとよくわかるんですけど、メロディホリックです。音楽好きでいろんな曲を聴き続けてきた結果、単純なメロディには飽きてしまっているんでしょう。ちょっと変わったメロディ、個性的なメロディを聞くと、おぉどうしてそんなメロディを作れるの?、って感動してしまうのです。僕が音速ラインを好きな理由はまさにそこです。彼らのメロディは、単にレトロってわけでもなく、懐古的でありながら新しく、美しく、すべての曲に統一した世界観があり、それが彼らの個性として確固たるアイデンティティを築き上げています。そこが好きなんです。

そしてそのことを彼ら自身(や周りのスタッフも)十二分に理解しているからこそ、シングルにもっとも彼ららしい個性を放つ曲を選曲してくるのです。それこそが音速ラインなんだ、ってこと。「ラリー」や「週末旅行」だって音速ラインらしさもありますが、彼らの一番いいところが表現されてないんです。彼らのマイナーコードは他に誰も真似できない一級品です。メジャーコードでは彼ららしさが半減しちゃうんですよ。ただ、残念なのは、世間一般ではメジャーコードのほうが受けがいいんですよ。メロディホリックではない人たちにはね。スキマスイッチで言えば「View」より「全力少年」のほうが受けるんですよ。レミオロメンで言えば「雨上がり」や「電話」より「蒼の世界」や「粉雪」のほうが受けるんですよ。フジファブリックで言えば、、、あ、彼らは真正のメロディホリックでした。。

音速ラインももっとセールス狙ったっていいのに、って気もします。そういう曲だって充分書けるんですから。ただ、そんな能ある鷹が隠している爪をファンだけが知っているってのはちょっといい気分です。

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